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身近な自然としての吉野川河口の価値


吉野川は、四国のほぼ中心の瓶ヶ森付近から発し、四国の約5分の1を集水域としながら、約194kmを東流し、紀伊水道に注ぎ込んでいます。河口から第十堰までの14.5kmにわたる汽水域は、生態系や景観などに関しても日本の河口本来の姿を残しています。河口汽水域の環境は、流域の自然や人間活動、さらに海洋の影響を受けながら、常に形成・維持・改変されてきました。河口は、藩政時代から阿波藩の城下町として栄え、現在人口約26.5万人を擁する徳島市近郊に存在し、汽水域とあいまって、人間活動とのかかわりは、歴史的にも密接である。汽水域流域での藍の栽培に肥料として使用された干鰯の輸送を介して、藍染文化が全国各地に広まったことなども、その一例です。

吉野川河口汽水域においては、汽水域から海域にわたる高度な生物多様性が確保されています。河口デルタの湿地や網目状水路、干潟、砂州、砂浜、海中の河口テラス地形など多様な環境要素を基盤として生態系が形成されているからです。汽水域の青海苔やシジミ、干潟の貝類やエビカニ類、魚類など水産資源の豊饒さは、河川と海の出会う場ならではのものです。「鳴門金時」として有名なサツマイモや野菜の栽培なども河口域に堆積した土砂が基盤となっています。県庁から車で10分ほどの距離にあって、大きなヨシ原をともなう広大な河口干潟では、レッドデータブックに掲載されているシオマネキ、ハクセンシオマネキやルイスハンミョウはじめ、今や各地の干潟から姿を消しつつある多種多様な生きものが、ごく当たり前に見られる場所です。それから、ダイゼン、メダイチドリ、ハマシギなど渡り鳥の飛来数が多く、160種以上の野鳥が観察されています。さらに、人間にとっても、吉野川河口は良質な海苔やシジミを産出しており、ウォーキング、バードウォッチングや散策、子どもたちにとっては、豊富な生きものと戯れる天然のあそび場として、人々に大きな安らぎをもたらしています。

さらに、河口の広大な風景は人々に最も愛される場所として親しまれ、豊かな水辺環境を提供しています。