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■徳島県立博物館研究報告(1997)第7号.69-79.
吉野川河口域周辺におけるシオマネキとハクセンシオマネキの生息分布について
井口利枝子・田島正子・和田恵次
は じ め に
シオマネキUca arcuata やハクセンシオマネキUca lactea が生息できる干潟
や河口域の泥砂地は、日本各地で埋め立てや改修工事が施され、このため生息場
所は激減してきた。
シオマネキは三重県・和歌山県・徳島県・香川県・福岡県・
宮崎県(本城川河口)及び有明海周辺と沖縄本島しか記録がなく、現在まとまっ
た個体群サイズが維持されているのは徳島県吉野川河口、有明海沿岸と宮崎県本
城川河口ぐらいしかないとされている。(和田他1996)。
ハクセンシオマネキ
は、紀伊半島以西鹿児島まで分布し、シオマネキに比べると記録される地域は多
いが、その記録はコメツキガニやチゴガニなどの他のスナガニ類に比べて多くな
い(和田他1996)。また、環境庁編(1991)の「日本の絶滅のおそれのある野生
生物(レッドデータブック)」の中では、両種とも希少種として扱われている。
徳島県でのシオマネキについては、江戸時代の「阿淡産志」の中で博物画と共
に報告されたのが最初であった。また、酒井ら(1987)は、吉野川河口域および
その汽水域から、カイ類16種類とシオマネキやハクセンシオマネキなど20種類の
カニ類を採集し、分類学的な観点から報告している。中野ら(1997)は、吉野川
の住吉干潟におけるシオマネキの分布を調べて報告しているが、我々は、調査領
域を広げ、吉野川河口域とその周辺において、生息分布が空間的にどのような広
がりを持ち、また個体群が存在しているのかについて調べた。
まとまった個体群が維持されている全国的にも貴重なシオマネキの生息地であ
る吉野川河口域における分布の現状と吉野川以外の河口域での生息の情報を記録
しておくことは、干潟を含めた河口環境についての今後の生態学的な研究の基礎
データになると考えられるので、ここに報告する。
*和田恵次:奈良女子大学理学部教授
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